2012年6月7日放送・テレビ東京系列「カンブリア宮殿」に、世界一のネット小売企業アマゾンのCEOジェフ・ベゾス氏が出演していました。私は今までジェフ・ベゾス氏の名前も顔も知らなかったのですが、徹底した顧客至上主義の考え方が素敵でしたので、ジェフ・ベゾス氏のインタビュー部分をまとめておきます。
テレビドカッチ「カンブリア宮殿」
※尚、当記事は出演者インタビューの書き起こしが大部分を占めますが、テレビ東京さんより掲載許可を得た上で記事にしています。
なぜ、Amazonは本以外の商品も扱うようになったのか?
小池栄子(以下、敬称略):
Amazonという会社の名前はベゾスさんがお考えになったのですか?
ジェフ・ベゾス:
そうです。アマゾンは世界で一番大きな川です。最高の品揃えを目指し、この名前にしました。
村上龍:
Amazonができてから、本は送ってくれるし、食料品も水もワインも送ってくれる。ライフスタイルが変わってしまったんです。
ジェフ・ベゾス:
それは嬉しい。「人生にはワインや食べ物だけでなく本も必要」言われているとおりですね。
小池栄子:
ありとあらゆるものが揃って売られていますが、それは最初から考えられていたことなのですか?
ジェフ・ベゾス:
最初は書籍だけで始めました。スタートして1、2年後、お客様からメッセージメールが届くようになり、そこには「音楽も売ってくれませんか?」とありました。私たちは音楽も扱うことにしました。すると次は「ビデオも売ってくれ」という声が届き、VHSも加えました。
DVDが出ればDVDも加えました。こうした要求に応えるうちに、私たちは1000人のお客様をランダムに選び、買いたいものをアンケートするようになったんです。その回答の中に信じられない要望がありました。「自分の車に合うワイパーを売って欲しい」というのです。私は気づきました。「人々はインターネット上であらゆる物を買いたいのだ」と。
何かを生み出す「逆回りの思考」とは?
村上龍:
結局、カスタマーをすごく大事にするんだと。彼らの満足を考えるっていうことをAmazonの複雑なコアのコンストラクチャーを見ると理解できそうな気がするんです。
ジェフ・ベゾス:
そのとおりです。アマゾンをシンプルに言い表すなら「地球で最もお客様を中心に考える会社」です。私たちはお客様の声に耳を傾けます。しかし、聞くだけでは足りません。心がけるのは何かを生み出すこと。お客様が何を求めるかを予測し、お客様がそれに気づく前に生み出すのです。
村上龍:
これだけの成長を達成した最も大きな要因は「お客様のことを考える」ですけども、そのためにどういうことをやってこられたのですか?
ジェフ・ベゾス:
私たちの顧客主義は自分たちができることを考えて動くのではなく、お客様が何を求めているのかを把握し、その後でどうやれば提供できるのかを考えます。これを「逆回りの思考」と言っています。多くの会社は違います。お客様が求めているのは「商品を選べること、安いこと、早くて正確な配送」これを実現するため何をやるかが大切なのです。
なぜ、Amazonは売上を落とす機能を取り入れているのか?
村上龍:
僕が「これぞAmazon」と一番ビックリしたのは、カスタマーレビューなんです。僕の作品を酷評したりしていると、すごく嫌なもんなんですけど、いちカスタマーとして見ると、カスタマーがその本を評価するっていうのは革命だと思うんですよ。お金を出して何かを買った人はそれを批評・批判する権利がある。
ジェフ・ベゾス:
その意見に賛成です。実は最初の頃、いろいろな出版社から「前向きな評価だけアップしたらどうか」とクレームをもらいました。そのほうが本の売上が伸びるからです。でも、私たちの意見は違いました。私たちがやりたかったのは本を売ることではなく、お客様が買うかどうかを判断するためのお手伝いです。だから、良い意見も悪い意見も必要なのです。
そして、何度も思ったのはお客様のニーズに応えるように努力していれば必ず信頼を得るということです。長い目で見れば買い物もたくさんしてくれるのです。長期的展望がなければこうしたアプローチはできません。私たちのWEBサイトには以前買ったものを知らせる機能もあります。お客様に注意してあげるのです。
以前買ったCDをうっかり1年後に買ってしまうこともあるでしょう?だから私たちは知らせることにしました。「インスタント・オーダー・アップデート」という機能です。これは短期的には売上を多少下げますが、本当にお客様と同じ目線に立つなら意味のある機能です。「1年前に購入済みだから自分の本棚を探してみてください」と言ってあげるのです。私たちの目標は成長ではありません。お客様に最高の満足体験を提供することなのです。
Amazonのオフィスがお洒落でない理由
小池栄子:
ベゾスさんが倹約家というのは性格なんですか?
ジェフ・ベゾス:
それは私の個人的な性格ではなく、Amazonが会社として打ち出している基本方針です。私たちはお客様と関係ないものにお金をかけたくありません。お客様はオフィスに来ることはないので家具はシンプルでいいのです。心地良く、実用的であるべきですが、お洒落である必要はありません。もしも、弁護士のようにお客様がオフィスに直接来るのであれば、立派な家具が必要かも知れません。
でも、Amazonは違うのです。質素の先にあるのは、お客様を喜ばせるためにどうお金を使うかということです。お客様が喜ばないことにお金を使うのは無駄遣いであり、排除すべきことです。
ベゾス「アイデアは行き先が見えない時に生まれる」
村上龍:
大変なこともあったと思うんですけど、ベゾスさんはビジネスシーンにおいてどういう時が楽しいんですか?
ジェフ・ベゾス:
一番充実感を感じるのは、問題解決のためにブレイン・ストーミングをチームの人たちとやる時です。何か問題やアイデアがあるときは必ずやります。
■ブレインストーミング
集団でアイデアを出し合うことによって相互交錯の連鎖反応や発想の誘発を期待する技法。Wikipedia:ブレインストーミング
例えば今、2つの案があっていずれも気に入らないなら、3つ目の案を探るべきです。みんなでブレイン・ストーミングしてアイデアを出し合えば、自分では解決できない問題の糸口が見つかることあります。だから私はブレイン・ストーミングの時間が大好きです。
村上龍:
御社ではマネージャーの会議はシリアスでシビアだと聞いたのですが。
ジェフ・ベゾス:
そうですが、笑うこともよくありますよ。会議はそんなにシリアスに行うものではないと私は思っています。会議本来の目的が失われてしまって時間の無駄です。最も使えるアイデアは脱線したり、行き先が見えない会議から生まれるものです。だから会議はちょっとしたユーモアやジョークで始まり、元気よく終わりたいと考えています。それが会議を良くすると思います。
バブル後に消えていった会社とAmazonとの違いとは?
村上龍:
Amazonはもうダメだと言われながらあるとき黒字になって、一気に買える商品が爆発的に増えていった。Amazonが潰れるかもと言われてたのは準備期間だったのですかね?
ジェフ・ベゾス:
その頃「Amazonはダメだ」と言っていた記者が取材の直後に「実は私もAmazonの常連だ」と言ってきたりしたんです。そこでデータを見てみると、お客様は増えているし、満足度をチェックしても問題ない。リピーターも多かった。一度Amazonを使ったお客様は何度も使ってくれていたんです。だから赤字の期間でも自信を持てました。インターネットバブルで多くの会社が消えましたが、彼らはお客様中心の息の長い会社をつくろうとせず、ウォール街のほうを向いていたんです。
小池栄子:
赤字が続いていても会社を上場させたり、存続させたりできるものなのですか?
ジェフ・ベゾス:
あの時はできました。ただ赤字と言っても、効率が悪いからなのか未来に投資しているからなのかで全く違います。外から見る投資家にはどちらの状態か見分けるのは困難です。しかし内側から見れば明らかに未来への投資で出ている赤字です。決して無駄遣いしていたわけじゃないのです。
ネットビジネスをやることに迷いはなかったのか?
村上龍:
Amazonをやろうって思う前は、金融関係の会社で結構お給料も良かったし、非常に難しいチャレンジだと思うんですよ。インターネットビジネスをやるっていうのは。その時は迷ったり考えたりしたんでしょうか?
ジェフ・ベゾス:
迷いました。当時の会社の上司には「もう2日考えろ」と説得されました。それで遠くへ行って考え、私は気づいたんです。もし挑戦して失敗しても私は決して後悔しない。でも、もし挑戦しなかったら私は「80歳になっても後悔しているだろう」と思ったんです。80歳のあなたを想像してみてください。その時、後悔は最小限にしたいでしょう?ほとんどの後悔は自分が怠慢でやらなかったことなのです。後悔するのは「やらないこと」です。
感想:レビューサイトのあるべき姿を再確認しました。
ジェフ・ベゾス氏の
私たちがやりたかったのは本を売ることではなく、お客様が買うかどうかを判断するためのお手伝いです。だから、良い意見も悪い意見も必要なのです。
という言葉は非常に納得・共感できるものでした。インターネットマーケティングにおいて、「エゴサーチ」「レピュテーションチェック」と呼ばれる自社商品の口コミ情報をチェックするのは今や必須の作業です。世の中に良いレビューしかなかったら、これらの作業を販促活動や次の商品開発に活かすこともできません。
実際、私も自分のダイエット商品に関して「販売サイトの文章が高圧的」と書かれた口コミを見て、セールスレターをこっそり改善したこともあります。自分の信念や販売戦略上、改善できないこともありますが、このような第三者の実直な意見というのは非常に参考になります。
人それぞれ色々な価値観や考え方を持っていますから、ブログを運営している目的も人それぞれです。ソフトバンクの孫正義さんも下記のようなツイートをしていましたが、
誰に嫌われても、批判されても信ずる事を言いたい。
RT @monkey_d_joji: 日韓両方の政府に嫌われることが怖くないんですか?
— 孫正義 (@masason) 2012, 5月 9
どこの誰かに「正義感を押し付けている」と価値観を批判されようと当ブログではAmazonのCEO・ジェフ・ベゾス氏の考え方を尊重し、買う必要があるか判断の手助けとなるレビューブログを目指していきます。
●本日のまとめ
Amazonが赤字経営から大成長を遂げた背景には、顧客のニーズを把握してありとあらゆる商品を揃え、目先の売上を狙うことはせずに、長期的な視点で信頼を構築していくという徹底した顧客主義にあった。
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この記事へのコメント
めしおさんこんにちは。
>私たちの顧客主義は自分たちができることを考えて動くのではなく、
>お客様が何を求めているのかを把握し、
>その後でどうやれば提供できるのかを考えます。
私はここにズドンときました。
これこそ真の顧客主義だと思いました。
ジェフ・ベゾスさんの素晴らしい言葉の数々を
テレビ東京に掲載許可を取ってまで記事にして頂き、ありがとうございます。
瀬川さん
コメントありがとうございます。
素晴らしいので記事にせずにはいられませんでした^^
アマゾンも結構チャレンジャーだったんですね!
とその前に
テレビの著作物を勝手にwebコンテンツにするのって著作権的にOKなんですか?
メインの独自の文章量のほうが少ないので引用の条件もみたしていないような‥
>テレビの著作物を勝手にwebコンテンツにするのって著作権的にOKなんですか?
おそらくNGです。著作権者に確認してください。