アフィリエイトのPR表記ができる機能(ステマ規制対策[1])を実装したWordPressテーマ「般若ビルダー1.8.1」をリリースしました。
私はアフィリエイターなので、アフィリエイトのPR表記にめちゃくちゃ関心が強いです。2021年6月の「第1回アフィリエイト広告等に関する検討会[2]」も当然のごとくオンライン傍聴しています。
また、ステマ規制に忠実に対応するため、
- 消費者庁の運用基準公表資料[3]すべてに目を通す
- 消費者庁に直接問い合わせる
という二段構えで景品表示法違反にならないPR表記ができる仕様に仕上げました。ただ単にPR表記をするだけではない、こだわりのステマ規制対応機能を紹介していきます。
記事の後半では、「アフィリエイトでPR表記なしが許される例外はあるのか」消費者庁に問い合わせた内容も書いておきました。
アフィリエイトPR表記(ステマ規制対応)こだわりの4つのポイント
般若ビルダー1.8.1では、ステマ規制に対応にするPR表記(主にアフィリエイト広告用)として、次の4つの仕様を実装しました。
- 補足コンテンツを表示できるアコーディオン拡張型
- SEOの影響を考慮して記事内には表示しない
- 対象記事だけ個別に表示/非表示できる機能
- どこまで目立たせるか調整できる「カラー変更」機能
PR表記機能の実装にあたって、こだわったポイントを紹介していきます。
1.補足コンテンツを表示できるアコーディオン拡張型
般若ビルダーのPR表記は、
- 1行だけの表示
- アコーディオン型で補足コンテンツを表示
2パターンを選択できます。
アコーディオン型は、2022年からPR表記で実績がある「うえだ式PR記法[4]」を採用しました。
もともと、ステマ規制は海外では2009年から導入されています(FTC規制)[5]。海外では、ある程度の長文で「Affiliate disclosure(アフィリエイトの開示)」を表記するのが通常です。
なので、当初は海外のFTC規制に習って長文表示で考えていました。ですが、消費者庁の基準では長文表示はNGであることがわかりました。
事業者の表示であることが不明瞭な方法で記載されているものとしては、例えば、以下のような場合が考えられる。
(中略)
事業者の表示である旨を、文章で表示しているものの、一般消費者が認識しにくいような表示(例えば、長文による表示、……
消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準
たとえば、小さな文字で、
当コンテンツは「般若ビルダー公式ブログ」が独自に制作しています。広告主から商品の提供や広告を受けることはありませんし、コンテンツの内容やランキングの決定には一切関与していません。広告主の依頼による広告はすべてお断りしています。また、当コンテンツは大手ネット通販サイトや広告主などから送客手数料を受領しています。詳しくは般若ビルダー制作・運営ポリシーをご覧ください。
こんな長文で説明してもbestな表示ではありません。一般消費者がパッと見で「あ、広告なのね」と瞬時に認識できるわけがないので、消費者庁の基準ではNGなのです。
広告なのか広告ではないのか。長文で説明して消費者にわかりにくくする手口を禁止しているのです。
「いや、誠実に運営していることを詳しく説明したいだけなんです…」
その問題を解決する手段として採用したのが、「アコーディオン型」です。まずは1行だけ明確に表示して、興味を示した人だけ長文コンテンツを読んでもらう仕様です。
「1行だけで十分派」「長文で説明したい派」どちらのニーズにも対応しました。
設定方法: [HB] 広告設定>PR表記の設定>PR表記のコンテンツ
2.SEOの影響を考慮して記事内には表示しない
般若ビルダーでは、PR表記を記事の外(ヘッダーの下)に表示するようにしました。
というのは、前述のうえださんが「記事内に表示したら検索順位に影響が出た」と報告していたからです。
偶然の可能性もありますが、長文型だと理論的にはあり得ると思いました。
というのは、記事内に表示となると、記事のリード文(冒頭文)に記事内容に関係のない長文が表示されることになるからです。
Googleのロボットは、記事タイトル→見出し→本文の順に記事を読み込むはずです。その本文の最初が広告表示の長文だったら、Googleのロボットが一瞬混乱するはずです。
ユーザーはもちろん、マシンリーダブルな文章(Googleロボットが理解しやすい文章)のほうが良いに決まってます。
なので、念には念を入れて、PR表記は記事の外に表示する仕様にしました。
あと、記事上部に入れてしまうと、検索結果のメタディスクリプションにPR文言が表示される確率が高まります。記事の外に出しておけば安心です。
3.対象記事だけ個別に表示/非表示できる機能
全体一括表示だけでなく、任意の記事にだけPR表記を表示できるようにしました。
アフィリエイトではなくアドセンスがメインだと、一部の記事にだけアフィリエイトを導入していることはよくあります。
その場合に、一括ですべての記事にPR表記すると「本来は必要ない記事なのに…」と、なんだか無駄な施策に感じてしまいますよね。
なので、必要な記事にだけPR表記ができるようにしました。PR表記対象の記事が少ないサイトやブログの場合は、個別に設定がおすすめです。
逆に、全体一括表示をしておいて、任意の記事のPR表記を外すこともできます。PR表記が必要な記事のほうが多いけど、一部に表示不要な記事がある場合にも対応しています。
設定方法: 般若ビルダー記事設定>広告>PR表記
4.どこまで目立たせるか調整できる「カラー変更」機能
PR表記の文字色、背景色、枠線色、補足コンテンツの文字色、背景色をカスタマイズできる機能を実装しました。
というのは、PR表記はただ表示していればOKなのではなく、一般消費者が明瞭(はっきりと見分けられること)に認識できないとNGだからです。
ブログサイト運営者からすると、PR表記はついつい目立たなく、わかりにくい表示をしてしまいがちです。
ですが、消費者は「表示が不明瞭な方法」として次のように通知しています。
事業者の表示であることが不明瞭な方法で記載されているものとしては、例えば、以下のような場合が考えられる。
(中略)
事業者の表示である旨を、文章で表示しているものの、一般消費者が認識しにくいような表示(例えば、長文による表示、周囲の文字の大きさよりも小さい表示、他の文字より薄い色を使用した結果、一般消費者が認識しにくい表示)となる場合
消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準
一般消費者が認識しにくい文字サイズや色を使って、目立たなくする行為を牽制しています。
ただし、小さい文字や薄い色を使うことが即NGなのではないです。結果として、一般消費者に認識しにくい表示になったらNGです。
般若ビルダーの場合は、PR表記の文字サイズは本文より小さめにしています。
なぜなら、スマホで表示したときに、デフォルト文言「当サイトはアフィリエイト広告を利用しています」が1行に収まらなくなるからです。折り返されると余計に見にくいです。
1行に収めてシンプルに、見やすく、わかりやすく、瞬時に判断できるサイズを採用しました。
さらに、背景色や文字色でどこまで目立たせるかカスタマイズできるようにしました。極端な例を示すと、
- A:当サイトはアフィリエイト広告を利用しています
- B:当サイトはアフィリエイト広告を利用しています
スルーしないで目を止めてしまうのは、小さな文字の「A」のほうだと思います。どこまで目立たせるか、目立たせないか、自分の好きなように調整できます。
設定方法: [HB] 広告設定>PR表記の設定>タイトルの背景色、文字色、枠線色、コンテンツ背景色、文字色
以上が、般若ビルダー1.8.1に実装したステマ規制対応(アフィリエイトPR表記)機能4つのこだわりポイントです。
アフィリエイトでPR表記しなくていい例外はあるのか?
2023年10月から、アフィリエイト記事にはPR表記(広告であることがわかる表示)が必須となりました。
ところが、PR表記しなくていい例外が存在しています。消費者庁の公表資料によると、次のように書かれています。
事業者が第三者の表示に関与したとしても、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められるものであれば、事業者の表示には当たらない。
消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準
さらに、アフィリエイトに特化すると、次のように書かれています。
アフィリエイターの表示であっても、事業者と当該アフィリエイターとの間で
消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準
当該表示に係る情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にある表示を行う場合。
上記の内容をそのまま受け取るなら、
- 広告主と直接のやり取りを一切していない
- ASPを介して間接的にも情報のやり取りを一切していない
この場合は、「第三者の表示」になるので、アフィリエイトリンクで紹介していてもPR表記は不要。と読み取れますよね。
たとえば、一般的なASPならASP管理画面に
- 販売ページに書かれていない案件の詳細情報
- レギュレーション内容
- 禁止事項
などが書かれているので、間接的な情報のやり取りが発生します。一般的なASPを介したアフィリエイトではPR表記は必須です。
ところが、楽天アフィリエイトやAmazonアソシエイトの場合。案件ごとの「提携」の概念もなく、ASP管理画面で案件に関する情報は何も提示されません。
楽天アフィリエイトやAmazonアソシエイトのようなアフィリエイトなら、PR表記は不要になる。そう読み取るのが通常です。
とはいえ、本当に楽天アフィリエイトやAmazonアソシエイトならPR表記は不要なのか。景品表示法違反にならないのか、不安は残ります。
消費者庁に「アフィリエイターの表示であっても」の意味を確認した結果…
そこで、この「アフィリエイターの表示であっても」に関して、消費者庁の表示対策課に直接問い合わせてみました。
ASPや広告主からガンガン送られてくるステマ規制の依頼メールは、しょせん二次情報です。一次情報を持っている消費者庁に事実確認をしないと意味がありません。
ということで、消費者庁の表示対策課の担当者と10分に渡って確認しました。
結論から言うと、「アフィリエイトリンクで紹介しているなら、例外なくPR表記は必要」でした。(話が違うじゃないか)
消費者庁の資料が誤解を招くというか、例外があるかのような記載ぶりですが、アフィリエイトならPR表記は必須でした。
消費者庁の伝えたかった「アフィリエイターの表示であっても」は、↓こういう意味らしいです。
「アフィリエイターの表示であっても、アフィリエイトリンクを使っていない商品紹介なら、PR表記はいらない」
という当たり前のことを言いたかったらしいです。「らしい」と表現したのは、消費者庁の担当者の発言を元に、私がわかりやすく表現したものだからです。
消費者庁の担当者(35~50歳くらいの女性)は、アフィリエイトのことをよくわかっていなかったです。終始「アフリエイト」と発音していました。
途中で退席して何かを確認したり、回答に詰まる場面もありました。ハッキリしないモヤモヤとした回答で、逆に私も戸惑いました。
「PR表記不要」が適用されるための6つの条件
ただし、アフィリエイトにおけるPR表記について、消費者庁の担当者に再三確認して言われたのは、
「アフィリエイトリンクで紹介している、報酬を受け取っている(受け取る可能性がある)なら、PR表記は必須」
ということでした。
その根拠はどこにあるのか、逆に何をもって「第三者の表示(PR表記不要)」と判断するのか。よく見たら消費者庁の資料[6]に答えが書いてありました(電話する必要なかった)。
次の「6つの項目」から判断します。
- 第三者と事業者との間で表示内容について情報のやり取りが直接または間接的に一切行われていないか
- 事業者から第三者に対し、表示内容に関する依頼や指示がないか
- 第三者の表示の前後において、事業者が第三者の表示内容に対して対価をすでに提供しているか
- 過去に対価を提供した関係性がどの程度続いていたのか
- 今後、対価を提供することが決まっているか
- 今後、対価を提供する関係性がどの程度続くのか
つまり、第三者の表示かどうかは、情報のやり取りの有無だけではなく、「対価(報酬)を受け取る関係性にあるかどうか」も含めて判断されるということです。
なので、アフィリエイトリンクで紹介している以上は、
うちのサイトの記事は、メーカーが表示内容の決定や制作に一切関与できない。サイト運営者が自ら内容を決定した表示だから、PR表記がなくてもステマ規制の対象とはならない。
なんて主張は成立しません。1件でも成果が確定したら、事業者と第三者の間に「対価の提供」という関係性が発生するからです。
2023年10月からはアフィリエイトリンクで紹介しているなら、PR表記(広告とわかる表記)は必須になりました。
正々堂々とファーストビュー、もしくは、アフィリエイトリンクの周辺にわかりやすく、「(アフィリエイト)広告」である旨を表示する必要があります。
以上、消費者庁の資料および、消費者庁に直接確認した内容を元に、私なりの理解も含めてまとめてみました。たぶん合っているはず。
ステマ規制の対応(アフィリエイトPR表記)は般若ビルダーver1.8.1で!
ということで、話がややずれてしまいましたが、般若ビルダー1.8.1にてステマ規制に対応したアフィリエイトPR表記機能を実装しました。
- 補足コンテンツを表示できるアコーディオン拡張型
- SEOの影響を考慮して記事内には表示しない
- 対象記事だけ個別に表示/非表示できる機能
- どこまで目立たせるか調整できる「カラー変更」機能
アフィリエイトサイト、アフィリエイトブログを運営する場合は、ぜひこのステマ規制対応機能を活用して、正々堂々とアフィリエイトに取り組んでください。
もちろん、PR表記機能はこれで完成ではありません。今後も状況を見ながらさらに改良していきます。
アフィリエイトPR表記対応にあたって修正・追加したファイル
style.css
adminpages-lp.php
adminpages-post.php
author.php
breadcrumbs.php
category.php
customizer-advertisement.php
functions.php
header-lp.php
header.php
header-common.php
home.php
hooks.php
index.php
init-variables.php
insert-tags.php
mokuji.php
page-authors.php
page.php
pr-note.php
search.php
single.php
template-functions.php
参考文献
-
↑
消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」(閲覧日:2023年9月28日)
-
↑
消費者庁「第1回 アフィリエイト広告等に関する検討会(2021年6月10日) 」(閲覧日:2023年9月28日)
-
↑
@ryu9zap/うえだりゅう/上田 龍(閲覧日:2023年9月28日)
-
↑
FTC「FTC Publishes Final Guides Governing Endorsements, Testimonials」(閲覧日:2023年9月28日)
-
↑
消費者庁『「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(PDF)』(閲覧日:2023年9月28日)
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